金曜エンタテイメント
“神の手”を持つとさえ言われた天才外科医・鳩村周五郎(船越英一郎)は、ある事件をきっかけに勤めていた東都大学付属病院から追放された。その事件が起きたのは半年前のことだった。夫殺しの容疑をかけられ、一人娘のつぐみ(美山加恋)を連れて逃げていた川上明日香(伊藤裕子)が、逃亡中に階段から転落し、周五郎のいる東都大学付属病院に収容された。そのとき、運悪く、とある大物代議士の息子がバイク事故を起こして運ばれてきたが、周五郎は、外科部長・倉橋(草見潤平)の命令を無視して、ケガの状態が悪かった明日香の手術を優先してしまう。その結果、明日香は一命をとりとめたが、代議士の息子は死亡。それに怒った倉橋は、周五郎を病院から追い出しただけでなく、医者を続けられないよう、各地の病院にも圧力をかけたのだった。
しかし、この事件には続きがあった。周五郎が病院を追われる直前、入院中の明日香が何者かに襲われたのだ。幸い、明日香は無事だったが、警察はなぜかこの事件の捜査をうやむやにする。すると明日香は、一緒にいると殺されてしまうからつぐみを施設に預けてほしい、という手紙を周五郎に残し、病院から姿を消してしまう。
それ以来、周五郎は、明日香の行方を追いながら、つぐみの面倒を見ていた。二人が長野県の松本市で暮らし始めたのは、1ヵ月前、明日香から周五郎に電話があり、その電話の向こうで松本駅のアナウンスが流れていたからだった。周五郎は、市内にアパートを借り、工事現場でアルバイトをしながら生計を立てていた。
ある日、周五郎は、現場で鉄パイプが落下し、多数のケガ人が出るという事故に遭遇した。周五郎は、ケガ人を松本城東病院に運ぶと、次々と彼らの手術をこなし、その命を救った。が、松本城東病院院長の南条(中山仁)は、周五郎のことを知っていた同病院の医師・長坂(高橋和也)からこの一件を聞かされ、顔をしかめる。この病院にも、東都大学付属病院からの圧力がかかっていたからだ。南条の指示で周五郎を訪ねた長坂は、周五郎のことを気遣いながらも、今回の一件を無かったことにしてほしいと口止め料を渡そうとした。が、周五郎はそれを受け取らなかった。
周五郎が、明日香の写真を手に繁華街で彼女の情報を追っていると、そこに警視庁の刑事・小室(内藤剛志)が現れた。小室は、担当を外されても、ひそかに明日香の事件を追い、周五郎をマークしている男だった。小室は、明日香を夫殺しの犯人だとは思っていなかった。そればかりか、明日香の夫の死や、彼女が逃亡中であることすら公表されていないことに不審を抱いているようだった。
そんなある日、周五郎は、とあるスナックで明日香の情報を聞き出す。半年前までその店で働いていた由紀子(田中美奈子)が、明日香を連れてきたというのだ。由紀子の写真を見せられた周五郎は驚いた。彼女は、つぐみと同じ幼稚園に通う、隼人(武井証)の継母だったのだ。
あくる朝、つぐみを幼稚園に送った周五郎は、そこで由紀子に明日香の写真を見せた。しかし、由紀子は、明日香のことなど知らないという。不審を抱いた周五郎は、由紀子の周辺を調査した。由紀子は、半年前に隼人の父親である下村(吉満涼太)と内縁関係になった。と同時に、スナック勤めを辞めて、松本城近くの土産物店で働いていた。由紀子の家を張り込んでいた周五郎は、夜中に、彼女が出かけるのを目撃し、その後を尾行した。が、周五郎が目を離した隙に、由紀子は何者かに襲われ、刺されてしまう。周五郎は、彼女に走り寄るが、由紀子は、資材置き場にあった灯油をかぶると、誰にも知られたくない、と言いながら焼身自殺を図ろうとする。周五郎は、由紀子の体に飛びついてそれを止めると、意識を失った彼女をアパートに連れ帰り、傷の手当をする。その際、周五郎は、由紀子が整形手術を受けていることに気づく。
周五郎は、意識を取り戻した由紀子に、明日香の事件のことを話し、改めて彼女のことを尋ねた。すると由紀子は、1ヵ月前ほどに、道端でうずくまっていた明日香を見かけ、店で休ませただけなのだという。が、別れ際に、誰かに自分のことを聞かれても知らないと言ってほしい、と言い残して、この町を離れたらしい。
しかし、事態は思わぬ方向に展開した。翌朝、由紀子が周五郎のアパートから姿を消したのだ。さらに、由紀子と同じ土産物店で働いていた康代(斎藤陽子)が死体で発見され…。
<脚本>深沢正樹
<企画>保原賢一郎
<プロデュース>菅井敦/川島永次/三瓶慶介
<演出>五木田亮一
<出演>船越英一郎/内藤剛志/高橋和也/伊藤裕子/美山加恋/田中美奈子/斎藤陽子 ほか