婿の刑事・三村邦夫(三田村邦彦)と娘・冴子(藤谷美紀)の夫婦になかなか子が生まれないと気をもむ祇園のお茶屋『みむら』女将・加代子(中村玉緒)だが、玄関前に可愛い男の赤ちゃんの捨て子を見つけて大喜び。「しばらく預かってください、名前は佑介」という手紙が添えてあったが、まるで孫が出来たような騒ぎだ。そんな中、邦夫に事件発生の呼び出し。神社の石段下で宗像病院の看護婦・高山美和(久野麻子)の変死体が発見されたというのだ。他殺らしいが、病院長の宗像光輝(勝部演之)と息子の副院長(鷲生功)には心当たりはないという。 邦夫らは、院長に会わせろと荒れている鋭い見幕の男に気づく。1年ほど前に妻ががんの手術中に死亡し、病院を恨んでいるという白井(ベンガル)だった。
『みむら』には、和歌山に帰っていた元芸妓の美鈴(有森也実)が一年ぶりに戻り、着付け教室を開きたいとたずねてきた。喜んだ加代子は『みむら』の座敷を提供する。美鈴は子供好きと見え、加代子らに負けず佑介を可愛がった。その美鈴がある夜、神社境内で何者かに首を絞められた。通りかかった芸者達が気づいて男は逃げたが、美鈴にも男の正体は判らない。
そして、今度はマンション自室で、宗像病院の看護婦・田村恵利(西原久恵)が何者かに刺し殺された。邦夫ら府警の聞き込みでは殺された美和も恵利も宗像の副院長が執刀した白井の妻の手術に付いた看護婦だった。妻を医療ミスで殺されたと思い込む白井の恨みの犯行か。しかし白井は、病院ぐるみの医療ミス隠しに怒りながらも殺人は否定した。
なおも病院内部を調べる邦夫らは、問題の手術に携わったのは他にもう1人、麻酔医の藤原がいたこと、その藤原は何と1年前に電車内の痴漢行為で訴えられ、裁判を前にビルの屋上から投身自殺をしてしまったと知る。しかし藤原の母親は、息子の痴漢行為も自殺も強く否定、しかも彼には結婚するはずだった恋人さえいたという。白井の話では、妻の手術ミス死への疑惑は、その藤原に打ち明けられたのだという。弁護士まで連れて裁判に臨むはずだった藤原が、痴漢行為のあげく投身自殺とは信じられない。しかし藤原が頼った弁護士・高嶋(本田博太郎)は、今は宗像病院の顧問弁護士になっており、藤原の事件を否定しなかった。
捜査を進めていくうちに、藤原が自殺した当時、彼の恋人がしきりに警察に藤原自殺の再調査を求めていたことがわかった。だが、一向にらちがあかず、故郷の和歌山に帰ってしまったのだという。そして、その彼女は春奴という名の芸妓だったということがわかったのだが……。
<脚本>石原武龍
<企画>長部聡介/金井卓也
<プロデュース>佐々木淳一
<演出>杉村六郎
<出演>三田村邦彦/中村玉緒/藤谷美紀/有森也実/神山繁/前田耕陽/本田博太郎/ベンガル/螢雪次朗/勝部演之/栗田よう子/古柴香織 ほか