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『独立猿人』
“ロックンロールの所有権”は若者だけのモノだと思ってた。
10代の頃、親への反抗、学校への反抗、社会への不満、それをぶつけるだけでロックだった。
いや、ロックっぽかった。
怒れる若者の特権で、歳をとれば怒る矛先もなく、そそくさと引退するものだと。
でも違った。
“ロックンロールの所有権”は、自分が想い続ける限り永久にあるのだ。
30代を経て、40代になった時、僕には歌いたいテーマが山ほど出てきた。
それは等身大の自分をさらけ出すという、あたり前のことだった。
そして今ほど自分が”ロックンロール”してると思う時期はない。
こういう作品をここ数年作る中で、ある日埼玉の入間の小さなカフェでライブをやった後、同年代ぐらいの男の人が子供連れてやってきてこう言った。
「こういう音楽をもっと僕の世代に聴いて欲しい」と。
自分があたり前に作ってきたのものは、なるほど世間ではまったく歌われてない類のものであり、アウトサイドなものなのかもしれない。
ふと、想像してみる。
電車に乗ったサラリーマンがイヤフォンから、僕の音楽が流れ、忘れてた感情が押し寄せ、涙を流してるシーンを。ライブハウスに、大の大人達が仕事帰りに押し寄せ、ビールを飲みながら、笑顔になって、時に泣いて、そして、明日へ向かって歩いて帰る姿を。
『独立猿人』は寺岡呼人の”ロックンロールアルバム”です。
寺岡呼人